キラメキ

彼はちょこんと座って隣の人物を見上げていた。
目の前の人物は大変な美形であると言われているが、彼にはまったくピンときていなかった。というより彼にとっては極めてどうでもいいことであった。
わかることは、今相手はなにかに夢中で彼が喚こうと騒ごうとまるで死んでいるかのようにピクリとも動かないであろうことだ。彼が聡明だから気づいたのではなく、経験則として知っていた。
だから彼はいつも通り男には構わず好きなように過ごしていた。
やがてドンッと大きな響いた。一瞬ビリッと周囲の空気が揺れたが、木々に吸い込まれるように静寂が戻る。これもいつものこと。最初こそ世界の終わりかと思い泣き叫んだが今は慣れた。
この音が収まると男はいつもふーっと…浅く長く息を吐いて動き出す。
「……一瞬、キラメキが見えました」
男は相変わらずこちらを見もしないまま呟いた。
「あれは、命が弾ける光です」
彼は男の顔を見つめた。普段はまったく変わらない男のその表情が少しだけ、上気したように揺らいでいた。
「人も、犬も、虫も木々も、その命が散るとき魂が輝くんです。それはとても……とてもきれいに」
そこまで言ってようやく男はこちらを見た。
「ですがみんな見えないと言います。……お前には見えますか?」
彼はただ首を傾げてみせた。男が何を言ってるのかは正直わからなかったし、当然その真偽も真偽もわからない。男には他に仲間がいるがそんな話をしていたことはなかった。
彼の思いを理解したのかどうかはわからないが、男は小さく頷くと言葉を続けた。
「人にはこのことは言わないと約束しましたが、お前はトリですから」
そう言うとファハドはカバンから小さくカットされた果実を取り出し、彼に差し出した。
「内緒ですよ。これは賄賂です」
彼、キーウィのシーちゃんはその香りを嗅ぐとやっと自分に理解ができる出来事が起こり、喜びに飛び跳ねたのだった。

おわり

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